年に一度のテック系お祭り。そうAppleのWWDCです。
昨年はApple Siliconへの移行発表や、iOSのウィジェット自由配置、AirPodsの自動切り替えなど様々なトピックが話題となりましたが、今年はどうなるでしょうか。
WWDCは基本的にデベロッパー向けのソフトウェア発表会。本記事では、ユーザー目線で注目の発表や、私が個人的に気になった件についてまとめて行きたいと思います。
ハードウェア
開催前の情報では、M1Xなるチップを搭載したMacBookPro14/16インチの発表が予想されていました。また、小型化したMacMiniやiPadの噂など、様々な憶測も飛び交っていましたが、昨年同様にハードウェアの発表はなし。Macに関してはもう少し後みたいですね。iPadは秋頃にiPhoneと同時期の発表になる可能性が高そうです。
iOS15
Appleとしても1番の目玉。今回もボリューム多めの内容でした。
FaceTimeが大幅刷新
FaceTimeというのは、iPhoneに搭載されている無料のビデオ通話アプリ。日本でこれを使いこなしている人はあまり見かけた記憶がないが、新型コロナウイルスの流行によるステイホーム需要の高まりからか、iOS15で大幅に機能が追加されることになった。
まずは空間オーディオに対応。タイル表示されたそれぞれの通話相手の音声が、表示位置に基づいて空間オーディオを利用して方向を持った音声として届けられる。
また、OSベースでノイズキャンセリングに対応し、FaceTimeで通話している際に周りに雑音が多い場合はノイズカットで明瞭な音声を相手に届けることができる。また、ビデオがポートレートモードに対応。
さらにFaceTimeがzoomなどのシェアを奪いにきた。それがFaceTime Linksだ。
事前にFaceTimeLinksでグループを作成することで、URLベースでOSを問わずどのデバイスからもFaceTime通話に参加できる。つまり、昨年zoomが大幅に躍進したオンライン会議サービスにAppleが参入したということだ。しかも、zoomにはないノイズキャンセリング機能まで追加して。
そして、zoomに真っ向から勝負するためか、通話中の共有機能に大幅な進化が加えられる。それがSharePlayだ。
例えば、通話中にAppleMusicから音楽を流せば、通話相手にも同様に音楽が流れ始める。ストリーミングで動画を見ている場合は同じ画面が相手にも表示される。この機能がすごいのはストリーミングの画面を共有するのではなく、動画そのものを共有しデバイスで処理するため、回線環境さえ整っていれば高画質で動画の共有ができる点にある。そして、iPhoneの画面で動画を視聴するのが嫌なら、AirPlay経由でAppleTVなどに出力可能だ。
さらには画面そのものの共有も可能。ゲームのプレイ画面をみんなで共有したり、操作方法について画面を見せながら説明ができる。
メッセージアプリも共有面で進化
これら6つのアプリで、「あなたと共有」機能が追加。メッセージを利用して相手と共有が可能になる。このあたりは便利になるのだろうが、LINEでのやりとりが多い日本人にとってはあまり馴染まない機能かもしれない。
写真は共有されたものが自動でアルバムにも同期される仕組みになるようで、旅行の思い出などを共有するには非常にベストな手段となることだろう。また、AppleMusicと連携して写真アプリ内のメモリー機能から、音楽付きのスライドショーが楽しめるようになる。
Walletが大幅に進化する。ただし日本はまだ対象外
一番の進化はここだと思っている。昨年のWWDCではAppleCarKeyを発表し、iPhoneがクルマの鍵になるというのが発表された。今年の進化はApplePay。ApplePayに鍵の機能が追加される。
Appleの目論見は、wallet機能を物理的財布から完全に置き換えること。そこで、UWB対応のクルマに対してiPhoneを鍵にできる機能を搭載。対応はBMWなどから。そして自宅や職場の鍵となること。社員証を登録すればタップするだけで職場に入れるそう。
そして、何より便利なのがホテルなどの鍵を置き換えられること。ホテルの鍵というと忘れて部屋を出てしまい閉じ込めたり、そもそも無くしそうになって不安になるなど、少し厄介な要素が多い。しかし現代人はiPhoneは常に持ち歩ける。これは賢い選択だ。
その他
そのほか小変更が加えられるものをざっと触れておく。
Mapアプリが細部までモデリングされた精細なマップへの進化。ランドマークなどがMap上で再現されるようだ。また、ナイトモードも備えているため、まるでシムシティのようにMapを楽しむことができる。
そして道路情報もより細かく進化。車線の情報が表示されたり、3D表示で複雑なインターチェンジの形を把握したりと、非常に使い勝手のよさそうな進化を遂げる。
ただし、この機能はまだ日本が対象外のため注意が必要。最近Appleの測量車もみなくなったし、日本対応は怪しいのかな?
そしてAirPodsPro/Maxに機能が追加。ビームマイクロフォン(指向性マイクとも)によって、軽度の難聴の方に向けた補聴器としての機能が追加。さらに、AirTagsのように探すアプリに対応し、紛失時もAirTagsと同様のシステムで探し出すことができる。また、イヤホンがケースに入ってるかに関わらず音を鳴らすこともできるため、探しやすさは非常に向上する。
iPadOS15
昨年のiOS14の発表くらいにワクワクしたのが今回のiPad OS。非常に楽しみな進化が盛りだくさんだった。
ウィジェットがiPad対応に
iOS14で追加されたホーム画面内へのウィジェット機能が、iPadでも利用可能に。これにより、ホーム画面にウィジェットを固定するやり方から、アプリと同一に並べる手法を採ることができるように。そしてiPad向けにより大きなウィジェットが用意され、iPhone同様にAppライブラリが導入。こちらはDockからアクセスが可能。
マルチタスクが進化
iPadの魅力であったSplit Viewや Slide Overなどのマルチタスク機能がアップデート。マルチタスク用のツールバーが表示され、タップすることで起動中のアプリがスライドし、ホーム画面から追加したいアプリを選択できるようになる。再び立ち下げたいアプリを下にスワイプすれば、別のアプリを選択可能に。
さらに、新たなエリアとしてシェルフ機能が追加。windowsでいうところのタスクバーに近いだろうか。Appスイッチャーのインターフェースが変わったと言ってもいいだろう。シェルフにアクセスすることで素早くアプリを切り替えることができるようになる。
これらの機能はキーボードショートカットでも利用可能になるため、私のようなMagic Keyboardユーザーにとっても朗報だ。
iPadでプログラミング
個人的には今回のWWDCで1番期待度が高いのがこれ。私も実は知らなかったが、SwiftPlaygroundというアプリがあるようで、このアプリはSwiftを楽しく学べるように開発されている。もとよりiPad用とMac用がリリースされているが、iPad版が大幅に進化すると考えたらわかりやすい。今までは学習用としてのコンテンツだったが、これをアプリ制作用にも利用できるようになる。つまり、今までiPadがMacになれなかった部分の一つであるコーディングを、とうとう実現したのだ。
とはいえど、言語はSwiftのみ。しかしiOS/iPadOSのアプリは基本的にSwiftで記述されるので、自身のiPad用アプリを自分で開発できるようになる。教育としても非常に有意なものになると思われる。そして、作ったアプリをAppStoreに提出することも可能になるようだ。
その他-メモ帳が便利に
昨年登場の翻訳アプリがiPadにも対応し、別のアプリ上からもアクセスできるようになる。Chromeの拡張機能にある翻訳がSafari上で行えると考えてもいいだろう。
もうひとつ、メモ帳が進化する。クイックメモという機能が追加され、右下からApple Pencilでスワイプすることで小さなメモアプリが起動。手書き/タイピングに対応しており、気になったことを瞬時に記録することができる。そして、そのメモはアプリに紐づいて記録されるため、どのアプリで使用したメモなのかをすぐに判断することができるようになる。
MacOS Monterey
昨年MacOSのナンバリングが11になったことで、今年は12になるのでは?といった予測もあったが、どうやら11が続投の様子。昨年のBigSurに続き、今年はMonterey(モントレー)。モントレーとは、アメリカのカリフォルニア州にある町の名前。MacOSは一時期ネコ科の動物名を利用していたが、MacOS X 10.9より地名へとシフト。
※2021/6/10追記:各メディアの報道だとMacOS12とする記事が多い。基調講演ではナンバリングに触れられていなかったが、12と考えたほうが無難の様子。それに伴い見出しも変更。
今回の発表内容の中では、個人的にMacOSが1番ワクワクしました。Mac持ってないけどね。それでは行ってみましょう。
ユニバーサルコントロール
このアップデートで1番の目玉はすばりこれ。まだリリースされてないが断言できます。
絶対に神機能です。
ユニバーサルコントロールというを一言で言うならば、”一つのデバイスから他のデバイスに直接アクセスができる”機能。
例えばMacを利用しているときに、iPad上のデータにアクセスしたいとしましょう。そんなときに、Macのカーソルを移動させていくと、あら不思議、カーソルがiPad上に移動するじゃないですか。これがユニバーサルコントロール。
これはMac-iPad間に留まらず、Mac-Mac間でも使用でき、3デバイス以上であっても問題なくコントロールできるみたいです。2年前のWWDCではSideCarが発表され、iPadがサブディスプレイへと変貌するというのが発表されましたが、今回のはサブディスプレイではなく、直接アクセス。つまり、iPadで描いているイラストなどのデータを直接アクセスできるということ。しかも、アクセス先のデバイスUIに従って動くため、MacからiPadへと行った場合にはトラックパッドの動きはiPadOSに準拠します。ドラッグ&ドロップもデバイスを跨いで行えるようになります。
ただ、本当に便利な機能なのか?と言われると少し難しいですね。おそらくはデスクにiPadとMacを設置して、サブ端末としてiPadを運用することを想定しているのではないでしょうか。一つのキーボードとマウスで複数デバイスに簡単にアクセスできるわけですから、便利になるような気がします。
Airplay to MacでMacの新しい使い道が
MacBookもiMacも、非常に綺麗なRetinaディスプレイを持っているにもかかわらず、本体でしか利用できないといった点が非常に残念に思われてきました。特にiMacは4K以上の解像度を持っているだけに、外部ディスプレイとして運用できないのか、といった声がたくさんあがっていたくらい。
今回のアップデートで一部の望みが叶うようになります。それがAirplay to Mac。
名前の通り、MacでAirplayができるようになるというもので、appleTVにAirplayしていたのをiMacの画面に出せるようになったということ。iPadで描いたイラストをiMacの大きく綺麗なディスプレイで確認したり、映画などを大画面で鑑賞したりするのに利用できます。さらに、新しいiMacで非常に評価の高いスピーカーも使用できるわけですから、音楽再生などに利用するのにも使えます。
完全に外部ディスプレイになるわけではないですが、ユーザーへの体験としてはかなり面白いものになると思います。特にiMacの売れ行きはさらに上がることでしょう。
Safariに拡張機能
Appleが誇る史上最速のブラウザ、Safari。今回のアップデートで少しデザインが変化。使ってみないことには便利かどうか謎であるが、個人的には少し微妙な気がする。
新機能としてタブグループというものが追加。たくさんのタブをカテゴリーごとに纏めることができるようになり、タブをたくさん開いてごちゃごちゃになるのを抑制する狙い。これらの機能はiPadでも利用可能で、AppleIDが同一なデバイスを跨いで変更が反映される。加えてiPhoneでは最適化されたUIでより便利なブラウザへ。
その他の発表
WatchOSでは新しいワークアウトが追加されたり、メンタルヘルスの機能が追加。プライバシー保護関係も変化があったものの、ユーザーとしては少し興味は薄いか。iCloudも様々なサービスが追加されたiCloud+がサービス開始。ユーザーが死亡後、指定した別のユーザーへとデータを簡単に引きづけるようになります。逆に消せるシステムも欲しい。
総評
昨年はiOSが結構フィーチャーされたが、今年はその反動かiPadとMacに焦点が当たっていたように感じる。特に昨年のM1Macの登場以降、Macの売れ行きが好調になっているのが背景にあるだろうか。
OSのアップデートは、マニアじゃない人からしたらあんまり興味はないかもしれませんが、ハードウェアを据え置いたままOSを進化させることによってユーザーに新たな体験を与える手法は非常に面白いです。自動車ではなかなか出来ない芸当ですね。
リリースは秋頃。iPadでコーディングができるのを楽しみに待ちつつ、Macの購入を検討したいと思います。27インチが刷新されたらすぐにでも。