DOSS審査は本当にD1GPにとって必要なのか

先日行われたD1GP第3戦筑波が大荒れだったようです。原因はDOSS不良による相次ぐ中断と、決勝戦がDOSSエラーで行えなかったこと。

今回はそんなDOSSにスポットライトを当てていきたいと思います。

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DOSSとは-導入から現在まで-

昔のD1GPを見ていた人には馴染みのない言葉”DOSS”。2013年よりD1GPの単走審査に導入されたシステムで、車両に取り付けたGPSとセンサによって車両の速度や角度を測定し、機械によって走りを点数化してしまおうというもの。詳しい原理は他のサイトなどを当たってもらうとして、DOSSの導入から現在に至るまでを少し追っていく。

時は2010年末、D1GPを立ち上げたドリキンこと土屋圭市氏と稲田大二郎氏がD1の運営から去ることになった。その後、2011年シーズンからはドリキン不在のD1GPが執り行われることになり、少しずつD1GPのブランド力などに対して暗雲が立ち込める。それまであったドリフト界のレジェンド・土屋圭市氏の審査を失った代償か、単走・追走ともに審査の基準が少し不明瞭になっていった。それまでの審査でも、多少の疑問が残る判定もあったものの、プロドライバーの経験から出るドライバー目線の意見、観客にもわかりやすい結果を基に決着をつけるやり方が広く支持されていたように思える。それが2011年から少しずつ変化していくことになる。

土屋圭市氏がD1運営から離脱する前より機械審査の導入の話は既に出ていた。かつてドリフト天国のDVD版でも登場しているドリフトボックスもそのひとつと言えるか。

DOSSが導入されたのは先ほども言ったように2013年のこと。導入初年度というのもあってか、2013年シーズンはDOSSエラーによる記録不良が時折見られた。特に印象的なのは鈴鹿ラウンドでの織戸学選手だろう。快心の一本がDOSSエラーで無効記録になってしまったのだ。観客を入れて行うスポーツとしてあってはならないことである。その後も、観客の見方とDOSSの点数に乖離が起きてしまったり、DOSS攻略のために少し綺麗なラインから外れた走りになってしまったりと、観客が少しずつD1から離れてしまう原因が出てきてしまっていた。

なぜここまでDOSSが嫌われるのか

2013年以降は単走審査の全てをDOSSが担ってきた。DOSS得点に対して審査員団が追加で得点の増減を行い、最終的な得点を決定していくというスタイルだ。しかしながら、このシステムはファンからあまり評価されていない。なぜか。

DOSS審査のメリット

DOSSの動作原理は、コース内に定めた区間に対し、ある明確な基準を設けて審査をするというもの。人が審査するときに出てしまう心理的なバラつきがDOSSには入ってこないのだ。

そして機械審査である以上、白煙の量やサウンド的な迫力などの五感に訴えかけるようなファクターが一切なくなる。純粋に綺麗なドリフトを決めた者が高い評価を受けるため、得点化されるプロスポーツとしては非常に公平なジャッジが行える。

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DOSS審査のデメリット

もちろんDOSSはいいことばかりではない。DOSS審査にはデメリットもいくつか存在する。

DOSSは審査区間をいくつかのセクターへと分割し、セクターごとの得点を合算して得点を出す。審査としては明確で、観客にとってもある程度はわかりやすいものの、何が原因で得点が上下しているのかが結果からはわからない。速度が遅いのか、角度が足りないのか、DOSSの得点だけでは理解することは出来ない。そして、先ほども述べたようにDOSSは五感がない。例えば同じ速度、同じ角度で走っている二台の車があったして、白煙の量が違っていたとしてもDOSSの得点は同一になるといった具合だ。実際には白煙が多いほうが単純にアクセル開度も高いと言えるので、本来なら評価対象となっていてもおかしくない。

DOSSはD1GPにとって必要だったのか

結局のところ、DOSS審査はD1GPにとって追い風になっていたのだろうか。私は今もなお素直に追い風とは思えない。

特に先日の筑波RdではDOSS不良のため、久々の人間審査が行われていた。しかし、審査団と実況・解説で走りの受け取り方が大きく変わっているところや、すこし納得のできないジャッジなどが露見し、ファン、そして選手からも大きく非難の声が出てしまうことに。特に筑波の1コーナーからS字の間での戻り判定が非常に曖昧だったことには、私も違和感を覚えた。1コーナー出口で失速気味の選手に対して、後ろからビタ寄せしていた選手が戻ってしまうのは先行に非があるはず。それにも関わらず後追いがマイナスジャッジを受けてしまった点はかなり解せない。

2019年からは追走審査にもDOSSが導入された。これについても少し疑問が多い。それまでも追走の先行車両はDOSS得点によるジャッジが適用されていたが、後追いもDOSSによる得点化が行われることになった。
具体的には、先行車との接近度合いと角度を統合して判断するというもの。今までは審査員が目で判断していたが、それをGPSなどのデータをもとに判断しようという魂胆だ。運営側としては、先行でほぼ勝ちが確定するポイントを取ってしまった場合に、後追いでアンパイの走りをさせない狙いもあると思うが、私個人としては少しその狙いに反対である。スポーツである以上はアンパイをとることはおかしくなく(F1でもあえて抜かないことがあるように)、あえて攻めることを強要させるのは少し選手を軽視している気もする。この点も含めてDOSSにはあまりいい印象がない。

そもそも導入から8年経っているDOSSが今もなおエラーが出てしまっていることや、審査団と実況で意見が食い違っていることなどの問題が解決されない限りは、DOSSはこれからもD1GPにとっては非常に厄介な存在になってしまうかもしれない。

D1GPはどうDOSSを使っていくべきか

DOSSを批判するだけならただの批評家ですので、私なりのDOSS改良案についてもお話ししておきましょう。

現在抱える大きな問題点は2つ。

  1. 点数の細かい配点がわからないこと
  2. 追走の審査基準が不透明なこと

これらの問題が解決されるだけでD1GPはDOSSをもっとうまく活用できるようになると考えています。

細かい点数配点

観客側も選手側も、DOSSの点数を見て少し悩ましいのがこの部分ではないだろうか。

各セクターごとの点数が表示されるのは明確でわかりやすいものの、実際にそのセクターの点数がなぜ高いのか、低いのか、その内情についてはブラックボックスだ。その部分が改善されるだけでも選手、観客共に競技に対しての不満が少し減ると思っている。

ここに一つ改善案を提示しておきたい。DOSSの内部システムとしてはおそらく各セクターに対して何らかの基準で得点を算出しているはず。角度やスピード、振り返しの速度などがパラメータとして考えられるが、それぞれの点数を具体的に表示してしまえばよいのではないか。セクター1で角度点が低いことがわかれば2本目は角度に少し重きを置いて走ることだろうし、スピードが低いとなればスピードに重きを置くだろう。

せっかくGPSロガーも利用して点数を測っているのに、ロガーのデータすらも非公表で競技が進められるのは少しもったいない気もする。ロガーのデータと点数のデータが競技中に公開されれば、観客としてもよりデータ分析的にD1GPを楽しむことができるはず。

追走の審査基準

現在の追走審査にもDOSSが使われていることは先も触れたが、ここにも少し問題がある。DOSSだけでは追走の全てを見切ることはできないのだ。

追走のセオリーとしては、先行は単走の走りをして後追いがそれに合わせるのがベスト。それは今までのD1GPが作り上げてきた評価基準みたいなものであり、実際にこの評価システム自体は私も大賛成である。特に先行車両をDOSS審査で得点化するのはかなり理にかなっていると言える。ただ、先行車両の失速などをDOSSが捉えきれない場合には後追いの車に対して不利な判定が出てしまう。これを是正したい。

追走にの判定に全てDOSSを利用するのは少し間違っているように思える。DOSSで先行ドライバーの走りを評価するのは大賛成だが、その評価を本当に鵜呑みにしていいのかは最終的に審査団が決めるべきだろう。特に先行がDOSS評価は高いものの無茶苦茶な走りをした場合、後追いは明らかに合わせることが難しい。それでは競技にならない。

あくまでDOSS評価はDOSS評価として、参考程度に留めておくのがよいのではないだろうか。かつての10割を先行後追いに振り分けるシステムや、双方を10点満点で評価するシステム、どちらもよかったと思うが、後者をうまく使うのがベターだろう。
DOSSによる先行車の得点を参考にしつつ、審査団が先行後追いの得点を10点満点で評価する。この形であれば失速などがあった場合にも審査団の手によって反映させることができる。

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最後に:DOSSだけが悪者ではない

何かとトラブルがあるたびにDOSSが悪者にされがちだが、実際DOSSだけが悪いかと言われると、そうでもない。

先日のD1筑波の場合はDOSSの点数を管理するシステムが間違っていたために判定が覆ってしまったし、審査団と実況の意見が食い違う場面も多く見受けられた。以前までは審査委員長の土屋圭市氏と実況の鈴木学氏の間に乖離もなかったのだが、最近はそういう場面が少し多いように見える。仮に乖離があったとして、審査団からの説明が少し不透明であったり公平性に欠けるものであったりすることもあるのが、なおのこと観客のD1GP離れを加速させているのではないだろうか。

もちろん、土屋圭市氏は日本を代表するトップドライバーであり、その腕前もピカイチ。現在の審査委員長の神本氏はドリフトの腕前に関しては土屋圭市氏ほどではない。その点も含めてどうしても不満が出てしまうのは仕方ないことだとは思うが、審査委員長としては十分に仕事をしていると思う。時折出てしまう同じ走りなのになぜか評価が違うポイントだけ修正されれば、不満も少なくなるのではないだろうか。

私もかつてはD1GPを見ていたし、斎藤大吾選手や中村直樹選手の走りを目標にドリフトを練習した1人です。そんな私だからこそ、今のD1GPには少し不満も多く、選手がフォーミュラDなどに流れてしまう気持ちもよく理解できてしまいます。プロドリフト競技の元祖かつ日本最高峰のドリフト競技であるD1GPは、これからも長く開催されてほしいと思います。

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