こんにちは。先日トヨタとSUBARUが共同で新型GR86/BRZを発表いたしましたね。今回はそんな新型車について、ドリフト屋さん的視点から見ていきたいと思います。
はじめに
まずは性能がわからなくては話にならないので、新型GR86のスペックをおさらいしてみます。
全幅:1775mm
全高:1310mm
ホイールベース:2575mm
トレッド(前):1520mm
トレッド(後):1550mm
最低地上高:130mm
車両重量:1270kg
パワートレイン:水平対向4気筒2387cc
圧縮比:12.5
駆動方式:FR
使用燃料:ガソリン
最高出力:235ps/7000rpm
最大トルク:25.5kg-m/3700rpm
これを見て、「おお、やるじゃん」と思う方と、「え?意外としょぼいな」と思う方がいらっしゃると思います。私はどちらかといえば前者でしょうか。その理由をはじめに述べていきましょう
全体的なスペック向上
この諸元を見て気づく方も多いでしょうが、先代型のZN6/ZC6(以後:先代型)に比べてサイズの変化が小さいです。大きく変わる部分は、全長が25mm長く、ホイールベースが5mm長くなった点でしょうか。86のサイズ的パッケージングは非常に優れていると思っており、この点が新型でスポイルされなかった点は高評価です。加えて車重が1300kgを切ってきたのは素晴らしいの一言。先代型は1番軽いモデルで1210kg、1番重いグレードで1270kgだったので、このスペックがどのモデルになるのかはさておいて、1300kg未満のグレードが存在するということ。そして2Lだったエンジンは2.4Lにパワーアップ。カタログスペック上では30馬力近く向上しています。PNレギュレーションにおいては先代型以上の活躍を見せてくれることが期待できますね。
ドリフト的視点-シルビアと比較して-
さて、新型の性能向上は理解されましたが、ドリフト的にはどうなのよ?ってのが本題です。そろそろ新時代のドリ車が現れてくれないと困るのが今のドリフト界。いつまでシルビアやツアラーVを使い続けるのでしょうか。
ここで引き合いに出すのは最終型シルビア、いわゆるS15型です。ドリフトではターボモデルの使用率が高いので、ターボモデルと比較してみましょう。
S15ターボのスペックは以下のようになっています
全幅:1695mm
全高:1285mm
ホイールベース:2525mm
トレッド(前):1470mm
トレッド(後):1460mm
車両重量:1240kg
最高出力:250ps/6400rpm
最大トルク:28.0kg-m/4000rpm
前述の新型86のスペックと比べて、どう違うのでしょうか。実は、サイズ面ではシルビアの方が小型です。ホイールベースは50ミリ短く、全長も20mm短いです。そしてエンジンは2Lターボの力で250馬力を発生と、シルビアにだいぶ分があるようにも思えます。新型86にはいいところがあるようには見えませんね。
ただしかし、新型86はNAで230馬力オーバー(実測は200前後だと思います)、トルク25キロと、案外シルビアに対して引けを取らないスペックになっています。ホイールベースは50ミリ長いため、少し緩慢な動きになってしまうでしょうが、初心者には返って扱いやすい動きをしてくれるはず。これが令和のシルビアか。
とはいえ不満もある
新型86はシルビアにもそこまで引けを取らないすごいいい車だぞ!と息巻いてるわけですが、そうはいえど不満点はたくさんあります。
第一にNAであること。シルビアがここまでドリフト界隈で支持される理由のひとつにターボ(過給機)がついていることが挙げられます。ドリフトはパワーがなくても十分出来る遊びですが、パワーがあればもっと過激な走りが出来るようになります。最近ではナックル関係も充実していて、パワーがないとそもそもドリフトを維持できないほどの角度で走ることも出来るようになってきました。そんな時に過給圧を上昇させるだけでお手軽にパワーアップが可能なターボモデルは重宝されるのです。先代もNAであったが故にジムカーナやサーキットアタックでは便利な点も多かったのですが、ドリフトにおいてはパワーマシマシのシルビアやツアラーについていけるポテンシャルを引き出せず、21世紀のドリ車スタンダードにはなれませんでした。
第二に切れ角問題。まだ新型は発表直後なので情報がありませんが、ノーマルの切れ角がどれくらいあるのかが気になるところです。先代型は思った以上に切れ角が少なく、ノーマルでドリフトをしていると少しずつ物足りない状況になってきます。ノーマルでもある程度の切れ角が保証されていると、とりあえず遊ぶ車としてはより楽しいものになるでしょう。切れ角増やしてくださいトヨタさん!
最後に車両価格。メディアでは憶測で400万程度と言われていますが、S15シルビアの新車価格は240万~。現実にこの時代に400万出してドリフトをする車を購入し、さらにそれで遊んでいくというのは難しい時代になってきました。トヨタの狙いとしては新車購入後から10年以後の市場に対して150万程度でタマが流通することを想定しているとは思いますが、新車でも頑張れば手が届くようなグレードも欲しいですね。RCのようなスパルタングレードとまでは言わなくても乗り出し300万程度になってくれると買う層は増えてくるのではないでしょうか。
最後に
長々と書いていますが、私は新型GR86にかなり期待しています。GRスープラ、GRヤリス、GR86と、どんどん新規でスポーツカーを出してきているメーカーの活動を、1スポーツカー好きとして応援したいですよね。私はGR86よりはGRヤリスのほうが欲しいのですが、ドリフトベースとして非常に使い勝手のよい車になるのであれば、今後の主流として20年以上の活躍が期待できます。今やシルビアやツアラーVが中古で100万オーバー、まして200万すらも超える時代になりつつある中で、300万程度の新車でドリ車ベースが手に入る時代になってくれると若者には助かりますね。